埼玉大学小貫ゼミとの交流会(2025年度)

2026年2月27日(金)~28日(土)に、埼玉大学の小貫ゼミとの交流会が行われ、埼玉大学を訪問しました。埼玉大学小貫ゼミでは、社会科教育を専門に研究されています。今回の交流会では、今年度の成果や卒業論文構想の報告、『社会科における「問題解決的な学習」とは何か』をもとにした哲学対話、モスクの見学などを行いました。詳しい内容は以下の通りです。
活動内容① 愛媛大学みかん教材発表(2月27日実施)
愛媛大学は、3回生を中心に開発したみかん教材の発表を行いました。

発表の内容は、愛媛県のみかん産業を題材に、小学5年社会科で持続可能性を考える授業についてです。本授業では、単元を貫く問い「なぜ愛媛県では、みかん産業が県を支える産業になったのだろうか。そして、これからもみかん産業は続いていくのだろうか。」を軸に、地理的分野・歴史的分野・公民的分野を横断的に構成しました。気候や段々畑などの自然条件、養蚕からの産業転換、戦後の輸送発展、さらに加工品やブランド化の取組を扱い、環境・社会・経済の三側面から持続可能性を探究させたいと考えています。
この発表に対して、なぜ小学校5年生で扱うのか、地理→歴史→公民の順序の意図は何かという質問が出ました。発表者は、農業学習との関連や持続可能性まで発展的に考えることができる点から、小学校5年生が適切ではないかと説明しました。また、みかん産業に関する地理的内容は、前年までに履修していることもあり、理解しやすい地理から入り、歴史へと展開する構成にしたと回答しました。さらに、全国で実施すべきかという質問には、愛媛県での実践を前提としていると回答しました。今後は、愛媛県以外でも応用可能な授業へと改善していくことが課題になると考えています。
他大学の方々から意見をいただいたことで、本授業の課題や今後の展望がより明確になりました。今後も授業開発・改善に努めていきます。様々なご意見をいただき、ありがとうございました。
活動内容② 埼玉大学卒業研究構想発表(2月27日実施)
埼玉大学からは、3名の卒業研究構想の発表が行われました。

まず、「ホネットの承認論に基づく社会科教育の条件-マンガ教材を活用して-」では、承認の概念やマンガ教材との関連について説明されました。承認は単に褒められることではなく、人が自分には価値があると思えるための社会的条件であり、承認の問題を個人の問題ではなく、社会的な課題として捉えることが重要であるというお話は、とても興味深く、勉強になりました。
次に、「『ケアの無責任』を克服する社会科の条件-トロントの「ケアの倫理」に基づいて-」では、ケアの概念やケアの倫理が社会を見る新たな枠組みとなる可能性について説明されました。ケアが軽視され、自己責任論が蔓延する社会において、ケアに着目して社会を捉え直すことの重要性だとお話しを強く感じました。今後は、私も自身の研究とケアの倫理とを関連づけ、ケアされる人のニーズに基づいた制度設計をいかに構想できるか考えていきたいと思いました。
最後に、「熟議に基づく中学校社会科授業開発研究」では、主に熟議の条件について説明されました。熟議の中心を話し合いそのものではなく、自身の意見構築に設定されている点は重要な視点であると感じました。熟議に基づく授業開発は研究が進められている一方で、現場の教師や子どもたちにとっては、負担に感じられる可能性もあるのではないかと思います。それに対する具体的なアプローチ方法についても今後考えていきたいと思いました。
活動内容③ 哲学対話 書籍『社会科における「問題解決的な学習」とは何か』
哲学対話の形式で、『社会科における「問題解決的な学習」とは何か』をもとに、意見交換を行いました。

ここでは、主に二つのことが議題に上がりました。第一に、問題解決的な学習における問題とは何かという点です。切実性という観点から、議論が深まり、切実性とは何か、本当に必要なのかという意見も出て、改めて考えさせられました。第二に、解決策を考える際には、何かを選択すれば何かを捨てることになり、犠牲が生じるという点を、社会科ではどのように扱うべきかという問題です。子どもの心理的安全性を確保しながら、解決策を模索していくアプローチについて考え続ける必要性を感じました。
また、哲学対話の後には、筑波大学の唐木清志先生から、問題解決学習についてお話しを伺いました。唐木先生からは、切実性に着目した題材選定の必要性や、問題解決的な学習の授業づくりにおいて必要な視点、地域教材にこだわりすぎる危険性について解説いただきました。特に、問題解決的な学習は社会科だけで完結するものではなく、社会科では問題発見能力を身に付けさせることが重要だというお話が印象的でした。社会科だからこそ、育成できる能力や扱うべき題材を考え、授業開発をすることの必要性に改めて気づくことができました。
活動内容④ モスク見学(@東京ジャーミイ)(2月28日実施)
2日目は、東京ジャーミイにて、日本最大級のモスクを見学し、イスラームについて学びました。

ガイドの方からイスラームの歴史や文化、偏見の問題について解説していただきました。例えば、アラビア数字がイスラーム世界を経由して広まったことや、断食はムスリムにとって単に辛いものではなく、心身を浄化する神聖な行為なのだということなどを教えていただきました。また、「知らないから偏見が生まれるのだ」という言葉がとても印象に残りました。将来、教壇に立つ者として、イメージではなく客観的事実に基づいて教授することが重要であると改めて気づきました。異文化を理解する楽しさや必要性に気づくことができ、とても貴重な経験となりました。
埼玉大学との交流会では、多くの学びを得ることができました。視点が広がった感覚があり、とても充実した時間を送ることができました。また、埼玉大学の皆さんの研究への向き合い方を知ることができ、自身の研究へのモチベーションも高めることができました。来年度は、より成長した姿で埼玉大学の皆さんと交流できるよう、研究に励みます。貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。また、ぜひ交流しましょう。今後ともよろしくお願いいたします。(報告者:大石有美香)
愛媛大学井上昌善研究室
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